夢を売る商売(SHANGRILA1999)


2000/8/25

(書く場所を間違えたようなネタだが、他に適当なページを持たないので、ここにアップする。いや申し訳ない。)

夢を売る商売。
松任谷由実。彼女のコンサートを観ると毎回感じることだ。

会場全景

しかし、彼女のショー(もはやコンサートとは呼べない)のなかでも今回のSHANGRILA1999は別格だ。
まさに夢を売る商売サーカス、シンクロナイズドスイミング、アイススケートと共に彼女が歌うという、信じられないようなビッグプロジェクトである。
いかに困難で世にも希なショーかというのは、準備段階からの模様がNHKで放送されたことでも判る。

シンクロスケート

実は、コンサートに行けない私は、ビデオを予約したのであるが、家でプレビューしたとき残念ながら、さほどの感動を得なかった。
(ショーに行けなかった)私が見たいところが殆どオーバーラップ(二枚の画が透けて重なって見える映像表現)で、なんとなくイメージとして見せていて、行けなかった欲求を満たしてくれる物ではなかったからである。

今回、久しぶりに棚からひっぱりだしてきて、じっくり見る機会があった。だがなぜか、今回は引き込まれるようなものを感じたのである。
それは、巻末に出演者全員の感想が書かれたビデオ添付のブックレットのおかげかも知れない。

一曲目

ショー自体もさることながら、今回は、映像表現という私の商売に関わる部分も何点か交えながら 感想を書き連ねてみようと思っている。

最初にショーの現場に行けなかった者としての不満、を書いてみよう。
やはり、すべての事を生で感じられなかった事、それがすべてである。それは、チケットがとれた瞬間からのワクワク感、会場外で待つ時間、会場の熱気、幕間の静寂、舞台から会場に洩れる演出の照明、隣の人の体温、体臭、体で感じる音、終わった後の虚脱感と外界とのギャップ、耳に残る大音響、、、、。
ま、行けなかった者のひがみ、というか、これらはすべて会場に足を運ばないと感じられないモノばかりである。やはりビデオにそれらを求めてはいけないか。
ショーの中程

さて、今回のショーは今までのユーミンコンサートのような、アルバム発売後の営業レビュー的なものでなく、単体のショーである。いわゆる総合芸術としてのショーか。それは選曲にも見て取れる。
彼女のあらゆる時代の名曲ばかり13曲である。

そして、驚くべきはサーカス、シンクロナイズドスイミングといったスタッフであるが、それらはすべてロシアの一流アーティストたちであることだ。
日本の一介のミュージシャンのコンサートで同時に、世界最高レベルのアーティストのショーが見られるのである。なるほど、チケットの値段が高かったのもうなづける。

今回撮影をしたのは、ツアーの中でも最初の方だろうか、横浜アリーナである。
舞台には15m四方もあろうかというプールがしつらえてある。シンクロ用だ。そして、天井には通常の照明と空中ブランコ(やはり、サーカスといえばこれが花形であろう)の用意がある。

プール空中ブランコ

そこで、ユーミンが歌い、舞い、駈け、踊り、観客を魅了していくのである。
ただ、いつもと違うのはビデオの中で彼女が語るように「全体の中の私」的スタンスで彼女が存在しているのである。私が私がと、全面に出てくるのではなく(気持ちとしては)「舞台装置の一部のような」感覚なのである。
なるほど、今回のショーは全体を眺めていると、総合芸術であるというのが、よく判る。この世界でも新しい試みであるサーカスとの融合、このあたりが見どころなのであろう。

バザール01 殆どのロシアの出演者が語る(ビデオ同梱のブックレットによる)ように、圧巻は、もしくは鮮烈に記憶に残るのは5曲目のバザールのステージか。

古代の女王のような装束のユーミンが乗る山車をしもべ(奴隷風)が担ぎ、会場からステージに現れる、ステージ上では、さながら古代絵巻のような、それこそバザール(古代中近東の市場か)がロシア出演者すべてによって演じられている。ピン投げ、一輪車など大道芸が目白押しである。バザール02

一部に引田天功ばりのトリックも交え、ステージでは古代バザールが展開される。
ラストはユーミンが民衆にもらったスイカをクラウン(道化師?)が奪い取り、宙に放った瞬間、爆発して次に展開する。といったものだ。爆発を現場でどう処理したのかは定かでないが。

バザール03バザール04バザール05

ステージのユーミンは相変わらずのパワーで、「これが50前のおばさん(失礼)か」と思える程情熱的だ。衣装も本当に毎回楽しませてもらえる。今回の分では個人的に「電飾入りのパジャマ」の様なものが気になった。

パジャマ

また、それら衣装につけるワイヤレスの「かえし」の受信機か、マイクの送信機だかもキッチリ衣装毎に色合わせされているのも芸が細かく妙に気になった。
受信機か
最近ではあたりまえだが、ミュージシャンたちの衣装までトータルにコーディネートされているのも総合芸術の証か。

コーラス隊

話が出たついでに、今回のツアーのバンドの印象を書いてみよう。
全体には、ギターの音色とパーカッションのキレ、キーボードのナチュラルなカンジが印象的なのである。サウンド全体としては、いつもの通り、か。

バンドの主な構成はkey-1、g-2、b-1、dr-1、parc-1、にコーラス3である。
ミキシングの考え方にによるものが大きいのだろうが(すなわち現場出力とは異なるビデオ用のミキシングであろうが)、リズム系ギター系はいい感じだが、少しコーラスのレベルを下げ過ぎの様に思えるが、いかがだろう。

ミュージシャン個人個人に関してそれぞれ言いたいこともあるが、ここでは割愛。代表してパーカッションの「小野かおり」ちゃんだけ触れてみよう。
小柄で色白、それなりに体格はあるが「この人がパーカッションねー」という印象を受ける、どうしてどうしてまだ若そうなのに、舞台度胸もいいし、明るいし、技術的にも小技が効いて大したものである。見せる舞台には、役者としても適度な存在感でオッケーである。
小野かおり

相変わらず、筋立てのない話の展開で恐縮だが、曲間は現場ではどうだったのだろう。行けなかった者として非常に興味のあるところである。
ビデオでは、ユーミンのインタビュー(独白風)や、リハーサルの模様、ツアーの移動日、オフ日の風景などを織り交ぜて構成されているが、それらは、まとめてどっかでメイキング風に作ってくれればよかったのだがなぁ。
個人的には、曲間(このショーでは幕間と呼ぶべきか)の様子、空気感が知りたいところである。

リハーサル打ち合わせ出演者全員

さて、ビデオであるが、エンディングロールにはずいぶんと沢山のビデオスタッフの名前があがっていた。
ライブのビデオスタッフだけでも30名以上だ。そのうちカメラマンは、ステディカム、クレーンカメラ、を入れて13名ぐらい。つまり一つのステージに13台ものカメラが用意されているのである。紅白歌合戦だってそんなに多くはない(中継は別ね)でしょうな。
そして、後の編集かれこれにスタッフが20名以上!CG製作などあらゆるビデオ関係者の数とはいえ、総勢で50名以上。凄いよね。 その他、協力プロダクション関連の名前も結構な数だった。
「こんだけ、人間と機材を投入してビデオを作って、一巻が\5,800-。それが仮に1万本売れたとして、えーっと、、、、」などとヨソの儲け具合が気になったりして、、、、。は、イケない?

ポップな曲で

そして、実際の編集であるが、エフェクトの具合とCG合成の効率などから考えて、どうやら全編ノンリニア(コンピュータだけで行う編集システム)のようだ。
しかし、単純に考えても映像ソースが10以上(13台のカメラ分)あるわけだから、ビデオトラックだけでも10以上は必要だ。 我々のような超零細が使うようなシステムとは全くの別物でしょうな。

映像効果としては、それなりに練られたものを適材適所といった使い方で、まぁそれなりの効果はだしているようだ。
冒頭にも書いたように、スケーティング、幻想的なのシンクロ空中ブランコなどはオーバーラップ、ジゾリを多用せず、もっとストレートにあるがままを見せる部分も設けて頂きたかった。
皮肉なことに、一番気に入った場面は単純なカット編集のところだった。
ラストから二曲目「DESTINY」の中で、コーラスの奈緒美ちゃんが右奥から広角のカメラに向かって走ってきて「チャッチャッ」と手を叩き、最大の大きさになるまでの(たった)18フレーム(約18/30秒)、が前のカット(写真参照)。それに続く次のカットは、ワイド気味にKeyの竹部さんの顔あたりを右前からハンディで後退しながら(結果的にズームバックっぽい)の画を1secと19フレーム(写真参照)。

前のカット後のカット

ここが実に小気味いいのである。この約二秒強、ここだけ何度も何度も見てしまった。 音楽に合わせてカットの長さを決めるのは、実際につないで何度も見るしかなく、1時間半もの長さを仕上げた、今回のビデオ編集スタッフの大変さは、やったことのある人しか判らないだろう。

しかし、ノンリニアで効果をかけたところより、原点というか、初歩的というか、基本技と言うか単純なカット編集が印象深く残ったのは皮肉としかいいようがないかな。はは。
もちろん、全体にビジネス作品としての仕上がりは充分に備えているがシンプルな、間(ま)だけの真剣勝負が一番、見る人を引きつけるということかな。なんて思ったりした。

改めて「今回のビデオを採点せよ」などと言われると、ひょっとして90点以上を私は付けるかも知れない。
なんと言っても、ブックレット巻末の出演者のメッセージがとても人間臭く、それを読んで視聴に臨むと感動がより大きなものに なるから。
ビデオ後半、出演者の紹介

ショーの最後



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